山本安志法律事務所 − 事務所ニュース


6号(2003年6月発行)

巻頭言 ◆ 弁護士 山本安志

「市民のための司法改革が実現できるか」が正念場になってきています。
当事務所は、事務所の特徴をアピールし、市民が気軽に相談でき、親しみ易い事務所を作ること、事件に対する的確な法的アドバイスを行うことを“合い言葉”にしております。
どうぞよろしくお願いします。

<特集> 裁判所までひとっ跳び:弁護士に依頼した事件どうなるの?

建物明渡事件

◆「不安」を仕入れて「安心」を売る◆ 元木会計事務所 税理士 元木久裕

 昨今、弁護士がらみのテレビ番組がかなり多くなっており、映画やドラマでも法律上の内容や解釈が中心となったものも少なくありませんが、いまだ一般市民が弁護士に触れる機会は少ないと思います。

 もちろんアメリカのような、やれハンバーガーショップのコーヒーでやけどした、やれ道が凍っていて滑って転んだ等で簡単にすぐ訴訟となるようなお国柄でないこともあるでしょう。弁護士の敷居が高く、気軽に相談できない、なにか問題になっても、弁護士に頼むほどではないと、自分の中で無理矢理消化してしまうことが多いのが一因かと思います。

 今や現代人は、皆常に心の中に不安を抱えたまま、コーヒーや音楽で一時的に癒やされて生活しています。しかし、それでは根本的な解決になっていないのです。癒やしの文化と叫ばれてから久しいのですが、私は単に気にしないように一時的に現実逃避しているのにすぎないのではないかと思います。

 八百屋であれば野菜・果物、花屋であれば花・・・というように、商店ではそれぞれ売る品物が決まっています。弁護士事務所の商品はズバリ「安心」だと思います。「不安」を仕入れ、「安心」を売っているのです。幸い、山本法律事務所にはいつ訪れても、毅然とした中に、柔らかい雰囲気があり、いつもどこかほっとさせられます。これというのも、山本先生をはじめとしたスタッフの方々のかもし出す雰囲気なのだろうと思います。

 私も税理士であり、同じ「士(さむらい)業」の人間です。手続きなどの重要性はもちろんですが、プロに任せたという安心感が大切だと考えています。
 おもしろおかしく作られたテレビ番組もいいのですが、個別に気軽に相談出来る弁護士を知っていることが本当の癒やしなのではないでしょうか。

市民のための司法改革実現か! − 弁護士 山本安志

 「2割司法」とは、日本では争いごとの2割しか正当な法手続きで解決されていない、ということを強調した言葉です。
 裁判は、時間と金がかかるというのが常識(一般認識)となっています。現状の2割司法を市民が使い易い司法に改革していく取り組みが始まっています。

 第1は、弁護士等の増員です。現在司法試験の合格者は1200人です。私が受験した30年前は500人でした。これを3000人まで増加させます。その養成方法についても、大学院に「ロースクール」を作って、いろいろな資質のある人を集めて教育し、質の高い法律家を育てようという制度が創設されます。弁護士の数を現在の3〜5倍にして、市民から優秀な弁護士へのアクセスを容易にするためです。

 第2は、裁判官制度の改革です。経験豊かな弁護士を裁判官に任官させ、市民感覚に富んだ裁判官を増やします。また、若い裁判官に、弁護士などの経験を積んでもらう制度も考えられています。

 第3は、裁判員制度の導入です。これは、一般市民に刑事事件の裁判に関与してもらい(アメリカの陪審員みたいなものです)、刑事裁判の公正さを保つ、画期的な制度です。なお、刑事弁護に関しては、逮捕されてから起訴される段階まで一貫して国費による弁護を受けられる制度を作ることになっています。

 第4は、リーガルサービスセンター構想です。これは、前記公的弁護や、いろいろな法律相談や仲裁を国費で行う、地域の拠点となるセンターをつくるという構想です。

 第5は、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入です。これは、勝訴者の弁護士報酬を敗訴者に負担させることで、無用な訴訟の抑制、裁判経費の削減を図るものです。しかし、私達は、この制度が導入されたら弱者は容易に裁判を起こせなくなると批判して反対しています。

 第6は、裁判を2年間で終わらせるようにする裁判迅速化法案も提案されています。

 このように、市民が使い易い司法に改革しようとしていますが、国の予算が十分確保できるか不明で、国にどれほど司法改革を実現させるかが試されています。また、これら制度が十分機能するか否かは未知数であり、一層市民からの厳しい選別の目が必要になってくると思います。

以心伝心 − 弁護士 新井聡子

私の夫は,大の阪神ファンです。シーズン当初は毎年熱狂的に盛り上がり,そして毎年いつのまにかおとなしくなります。その夫に頼まれ,横浜ベイスターズとの開幕三連戦のチケットを横浜スタジアムに買いに行きました。

 その窓口に並んでいて面白いことに気づきました。お客さんの多くは,「3月○日のS席2枚」というように注文しており,どちら側の席なのかを言わないのです。窓口のおばさんは,そのたびに「横浜側ですか」とか,縦じまのシャツを着た人には「阪神側ですね」などと無表情に確認をしていました。それに対して,お客さんは,「もちろん」とか「そうだよ」などと,あたかも当然という顔で答えているのです。窓口のおばさんが神様でもない限り,あなたがどこのファンなのかなんてわかるわけないのに!

 でも,こういうことは,実はたくさんあるのかもしれませんね。相手はわかっているはずだという思い込みのために,紛争が大きくなったのでは,と思われる事件もあります。口は災いの元ですが,言わなければ伝わらないこともたくさんあります。その加減が重要なのかもしれませんね。

交通事故訴訟について − 弁護士 徳田 暁

 最近,交通事故の被害に遭われた方の相談・依頼を受けることが多くなり,事務所内でも,ホームページの交通事故Q&Aの作成等を担当しています。

 ところで,交通事故訴訟においては,被害の迅速な解決を図る必要性が高いため,また,同じような被害を受けたのに,裁判官の違いにより損害賠償額に差異が生じるという不公平感を解消するため,これまでの裁判例などを参考にした,被害類型ごとの損害賠償額の基準が発表されています。(損害賠償算定基準、通称「赤本」など。)そこで、弁護士が,交通事故による損害賠償請求をするときには、この「赤本」基準に沿って請求することが普通です。ところが、加害者の代理人である保険会社には、独自の社内基準があるようで、裁判例の基準よりも低い基準しか提示してこないことが多いのです。しかし,裁判になった場合には,やはり「赤本」等による裁判例の基準が1つの目安となり、和解あるいは判決されます。少なくとも,裁判をすれば、保険会社の最初の提案額よりは支払われる保険金の額が上がることが多いように思います。

 交通事故の被害に遭われた方の中には,このように裁判例の基準と保険会社の提案額の開きが大きいため,事故のためだけでなく,正当な損害賠償を取るためにも,悩まれている方がおられます。また、裁判例の基準を知らないため、心の中にわだかまりを残しつつ,保険会社の提案額で諦めてしまっている方も少なくありません。

 また、逆に、交通事故を起こした加害者の立場からみると、自己の保険会社が,裁判例の基準で,被害者に対して,損害賠償の提案をしてくれないため、示談するのに大変苦労されたこともあるかと思います。

 確かに,保険会社が保険金の支払いを抑えることで、保険料の高騰は抑制されている面もあります。また,暴力団等による不当な請求もあり,そのような請求については,断固として拒絶するべきです。従って,裁判で主張・立証を戦わせる場合と訴訟前の交渉によって解決を図る場合とでは,基準が違っても然るべきとも考えられます。しかし、私は,正当な請求しかしていないのに二重の精神的・肉体的な被害を受ける,あるいは,同じような被害を受けたのに,裁判の基準を参考にできるかどうかで不公平が生じるという結果は,やはり避けるべきではないかと思うのです。

 交通事故訴訟は,保険や損害賠償の理論,ときには物理学や医学の知識などを必要とします。そのため,私自身,その専門性に堪えられる知識を身につけていかなけれなりませんが,その結果,少しでも被害者の利益に貢献でき,被害者間の不公平を解消させることができればと思っております。

脱 新人に向けて − 弁護士 佐野高王

 入所して半年がたち,「新人」としても折返し地点に来ました。入所以前に比べて時間の流れがぐっと速くなりました。ターボがかかったような。ちょっと怖いくらいです。

 この半年間弁護士として働いて,今強く感じるのは,人の話を聞く技術,人を説得する技術の重要性です(知識や経験の重要性は月並みなので割愛させていただきました)。

 法律相談,依頼者との打合せ,被疑者・被告人との接見,相手方・関係者との交渉,などなど,人と話すことは弁護士のあらゆる業務の基本です。

 当然のことですが,何をするにも,まず相手から話を聞かないと始まりません。しかし,仕事上接する多くの人の中には,事件と関係の薄いことをとうとうと話す人もいれば,逆にこちらからしつこく問いかけてやっとポツリポツリと話す人や,都合の悪いことを明かそうとしない人もいます。こんなとき,対話をうまくコントロールして,限られた時間で必要な情報を聞き出す技術がとても重要になってきます。

 また,法律相談で回答したり,打合せなどで方針を相手に伝えるとき,こちらの考えを押し付けるのではなく,本当に納得してもらうことが肝要です。これは実際には大変です。たとえば,裁判所で相手方から暴言を吐かれたから名誉毀損で相手方を訴えたいと相談されても,相手方の行為の立証が難しかったり,損害額が大きくないので費用倒れは必至だったりで,依頼を断念してもらうほかない場合があります。しかし,このような相手の意に添わない回答で納得してもらうのは特に難しく,説得には大変な気力・知力を要します。

 これから半年は、知識の習得はもちろん、このような聞き話す技術の習得にも力を入れようと思います。

理想の弁護士を目指して − 弁護士 八木美紀子

 山本安志法律事務所の一員となって、早くも6か月が経過しました。

 当初は、どこに行くにも何をするにも緊張し、心臓が口から飛び出しそうになることもしばしばでした。弁護士バッジを付けるのも、弁護士と名乗るのも気恥ずかしかったように思います。

 数ヶ月の短い弁護士生活の中で、最も嬉しかったのは、はじめて担当した国選事件の被害者に、「八木さんと出会えて良かった。」と言っていただいたことです。依頼者のお話を伺いながら、そのあまりの酷さに涙を流してしまったこともありました。一緒に頑張りましょうと言った依頼者の方にこちらの気持ちが伝わらなかったときは、とても悲しかったです。

 まだまだいろいろなことがありましたが、先輩弁護士にはもちろん、事務局にも支えられて、何とかここまでやってくることができました。私が事務所に入ったことを事務所のメンバーに喜んでもらったことがあるとすれば、クリスマスにケーキを焼いてきたことでしょうか。

 弁護士は、スーパーマンではありません。法律知識とそれを扱う公的資格をもっていますが、人間です。だから、できることとできないことはあります。

 それでも、問題を抱え事務所を訪れる方々の悩みや不安を少しでも解消することができれば、社会で生じるさまざまな問題を解決する糸口になれればと思い、考え、悩み、行動する。それが、弁護士のあるべき姿なのだと思います。

 当事務所では、個性豊かな弁護士がさまざまな紛争・問題にそれぞれのやり方で熱心に取り組んでいます。

 私も自分なりの方法で、目の前にある紛争・問題を解決するお手伝いをしていきたいと思っています。そのための実力を身につけるべく日々努力を重ねながら。

新人です。よろしくお願いいたします - 事務局AC

 昨年秋、折りしもTVでは弁護士番組ブームが到来したその時、私はこの事務所に転職してきました。
 初めて垣間見る“法曹界”。好奇心と少々の不安を持った私をまず驚かせたのは、毎日の事件の多さです。TVではたいてい一時間番組でひとつの事件を4〜5人の弁護士や事務員でこなしますが、実際にはそうではありません。一日で終わる相談もあれば1年もかかる事件もあります。弁護士も事務員も常に複数の事件に並行して取り組んでいます。こう書くととても機械的な感じがしますが、それだけではありません。
 例えばある日、依頼者が入院してしまったという知らせを受けました。それを弁護士に伝えたところ、一通りの話の後に「お大事に」と優しく言う声が聞こえました。「お大事に」は思いやりの言葉です。一人一人きちんと向かい合わなければ言えない言葉です。その時ふと、私は弁護士や裁判所を身近に感じることが出来ました。まだまだ失敗ばかりでてんてこ舞いですが、一日も早くリッパな事務員になれるよう頑張ります!

<お題> 最後の晩餐

おにぎり − 事務局 T

 人生の最後に食べたいもの…。なんてったって“おにぎり”。
 お米が大好きな私は、普段でもよくお握りを主食兼副食にしています。好物です。だから、随分前から、これを最後の晩餐にしようと考えておりました。
 出来れば、実家のある新潟の、父の従兄の住む辺りの田んぼ(魚沼産と同じく、山の涌き水で育てている)の“こしひかり”を、木蓋の鉄製お釜で炊いて欲しい。具はシンプルに梅干。炊きたての熱々を、手に塩をして握ったもの。ラップでくるんで握るとか、型に押しこむなんて言語道断。人の手で握るから、塩梅のいいお握りになるのです。海苔は、全部を包んで欲しい。一片だけおざなりに付けた、褌のような海苔は、けち臭いだけ。そして塩は、粗塩を炒って、程よく水分を飛ばした焼き塩だったら、最高。
 多分、好むと好まざるとに関わらず、人生の終焉を迎えるのは、病院のベッドの上。自宅でひっそりと…なんて、きっと叶わない大きな夢に違いない。病院でも、延命処置を拒否できない状況に、やすやすと置かれてしまいそうです。心の奥底の本心を消して、全身からいろんな管を出して、横たわっていることが容易に想像できます。
 点滴の管が出ていても、片手が動けば口に運べ、おかずもいらず、一個で充分満足できるもの。おにぎりは、最強の優れものだと思うのです。

インドカレー − 事務局 H

 私は、最後の晩餐にはカレーが食べたいです。それも絶対インドカレー・・・。
 今そう思うのは,5~6年前に初めて行ったインドカレー店の味の虜になったからです。
 その店に入ると、色々なスパイスやナンの焼ける香りなど,それだけでも満足してしまいそうなほどいい香りが漂っていました。
 私は、そこのカレーを食べて以来,インドカレーは本当においしいと思っています。それと付け加えるならデザートに甘い西瓜。旬ではない時期でも甘い西瓜があれば最高・・・かな。
 ともあれ,ささやかでもこんな最後の晩餐ができたら,私の人生も悪くなかったなぁと思えるような気がします。

家族全員で − 事務局 AM

 最後の晩餐というと、最後に何を食べたいかを考えますが、私は、最後に何を食べるのかではなく、最後に誰と食べるのかが重要かなと思います。すごくおいしいものでも、最後にひとりで食べるのは、寂しいです。

 最近はみんな忙しくなり、家族全員で食事を摂ることも少なくなりました。時々、家でひとり、ご飯を食べることなどがあると、やはりみんなでご飯を食べた方がおいしいな、などと思います。

 ちなみに我が家では、食事中にテレビは見ないので、ご飯を食べながらいろいろな話をします。やはりみんなで話をしながらご飯を食べるとおいしいし、お箸の進み具合も早くなる気がします。だから、最後の晩餐は家族全員で、くだらない話をしながらご飯を食べたいです。でもどうせ最後なら、超高級牛肉でしゃぶしゃぶがいいかなあ、と結局欲深い私でした。

ふだん家で食べているもの − 事務局 YK

人生、半分近く生きてきたけど、まだまだ、私が食べていない美味しいものがたくさんあると思う。宮崎名物の冷汁は、本場で食べてみたいし、テレビでよくやっているラーメン特集の中村屋のラーメンも食べたい!盛岡に行って、美味しいと有名な冷麺も絶対はずせない。しかし最後の晩餐となると、わたしはやっぱりシンプルに炊き立てのごはんとお味噌汁、おかずは脂が乗ったしゃけの切り身と甘いたまご焼きに、焼き海苔かなぁ…

特にたまごは大好きです。生たまごとしょうゆをごはんにかけてのたまごごはんは、大好物です。我が家では、これを「たまごポン」と言っています。居酒屋のメニューで厚焼きたまごがあると必ず注文するし、お寿司を食べても大好きなたまごは最後まで取っておく。

結局、最後の晩餐で思い浮かんだものは、ふだん家で、いつも食べているものでした。